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一般社団法人オーシャンスイープ協会
プラごみが流出する量より減る量が多い社会をつくろう


海をスイープ(掃除)しプラごみが減っていく未来をつくろう


● 取り組み内容を具体的に教えてください。


私たちは「プラごみが流出する量より減る量が多い社会をつくろう」という理念を掲げて活動する一般社団法人です。2018年から任意団体として活動を始め、海洋プラごみ問題がなぜ生じるのか、なぜ減らないのか、有識者や漁業関係者にヒアリングするなど予備調査を行い、2021年2月に法人化。内陸の方にも海の問題に関心を持っていただきたくて、あえて海のない埼玉県を拠点に活動をしています。

海洋プラごみを減らすには、「回収を進めること」「処分の仕方を変えること」「これ以上流出しないよう私たちが生活習慣を変えること」が必要と考え、3つの取り組みをすすめています。


1、プラごみ流出マップで社会啓発

2、海洋プラごみ処分チェーンを社会実装させる

3、流出防止や循環型社会に役立つ情報発信



「プラごみ流出マップ」ボランティアは全国に500人以上。ポイントは「無理やがまんをせずにできること」


●活動を広げるために、どのようなことをしていますか?


WebサイトやSNSで海洋プラごみの問題を情報発信し、私たちの取り組みを紹介した上で、一般の方には「無理やがまんをしなくてもできる」協力・活動として写真ボランティアへの参加、SNSでいいね!やシェアすることなどをお願いしています。また団体や企業には協賛、寄付、また海洋プラごみ処分チェーンへの参加などを募っています。


●「プラごみ流出マップ」について、内容と目的を教えてください。


全国の写真ボランティアに地元の川や海に流出している現場を撮影・投稿してもらい、地図に掲載・公開しています。一人でも多くの人に海洋プラごみ問題の現場を知ってもらい、「自分たちがごみを出さないよう生活習慣を変えていかなければならない」と気づいてもらうための取り組みです。



なぜ写真にしたのかというと、写真がもつリアリティーこそ行動変容を促す力になると考えたからです。鼻にストローが刺さったウミガメの写真を見たことがある方は多いと思います。言葉よりも、あの1枚の写真に多くの人々の心が動かされ、海洋プラごみ問題への意識を高めることができるのではないでしょうか。


私たちが全国の川や海に行って写真や動画を撮ることも考えましたが、膨大な時間とコストがかかります。そこで全国のボランティアに地元の写真を撮ってもらえば同時並行的に撮影が進み、全国の現場写真がスピーディーに集まると考えました。


現在、写真ボランティアは全国で約550人ですが、社会的な影響力を考えると1万人を超えていく必要があると考えており、参加が加速する何かしら「仕掛け」が必要だと考えています。その一つとして、高校生を対象に写真ボランティアの大会を開催することを計画中です。


●他の団体が貴団体の取り組みを真似したい場合、ボランティア活用は「こうしたらいいよ!」というアドバイスはありますか?


誰でも参加できるよう初手のハードルをできるかぎり低く設定し、それでいて参加している実感はあるように設計することが私たちの場合は効果がありました。写真ボランティアは、各自が時間や場所に縛られず参加できて、締め切りもありません。それに今はスマホで写真・動画を撮ることが日常の一部なので、外出先でプラごみを見かけたときに撮影するカメラがないという時代とは違います。ハードルの低さ、参加しやすさ、達成感や充実感を体感していただけるような、まずは「お試し体験」できる入口があるとよいと思います。



持続可能な海洋プラごみ処分チェーンとは


●海洋プラごみ処分チェーンとは、どのようなものをイメージしていますか?


漁業者が操業中に回収した海洋プラごみを陸に揚げて水抜きをし、熱分解できる設備を持つ協力企業に運び、マイクロプラスチックの原因にならないよう熱で分解する流れです。流れ自体はシンプルなのですが、複数の法律、回収・受け容れ・輸送体制などクリアすべき課題がたくさんあります。特に今ボトルネックになっているのは、チェーンに組み込める熱分解設備を確保すること。プラスチックを熱分解ができる設備は焼却炉を含めてたくさんありますが、「分別、塩抜きせずに処理できること」「環境負荷が少ないこと」「産業廃棄物処分業の許可証を取得できること」など、海洋プラごみ処分チェーンに組み込める、要件をクリアした設備や事業者は希少です。


私たちの調査では、半径150㎞圏内ごとに小さな処分チェーンをつくり、それを全国に増殖させていく方法がベターだと考えています。有効な技術や設備をお持ちの企業や、処分チェーンに参加してくれる団体などを広く発掘し、それらをつなげて、まずは1つモデルケースをつくるために取り組みを進めています。



SNS活用で発信コストを抑え、自走・持続可能な活動に



●SNSをどのように活用していますか?


非営利活動をする団体にとって、発信コストが抑えられるSNSはとても重要です。今はまだフォロワー人数が少ないですが当社団では、FacebookとTwitterとYouTubeチャンネルの運用を始めています。

過去情報を見返してもらうアルバム的なものとしてFacebook、時が過ぎれば流れてしまうけれど瞬間的な拡散力としてはTwitter、という使い分けをしています。

また、インターネット動画の約8割を占めるYouTubeの影響力は無視できないと思っています。次世代を担っていく人たちへの啓発効果を考え、これからYouTubeチャンネルは充実させていこうと考えています。



●「SNS活用はこうしたらいいよ!」というアドバイスはありますか?


フォロワー数万人を集めた個人的な経験を踏まえて申し上げれば、Facebookやtwitter以外にもインスタグラムやTik-Tokなどいろいろなプラットフォームの中で、自分たちの活動との相性や、自分たちが伝えたい層の反応を見ながらSNSを選別するプロセスを踏んだ方がいいと思います。まずは拡散的にいくつかのプラットフォームを半年程度試してみて、費用対効果やどれが自分たちに向いているかをつかみ、流入が多いものにリソースを集中させていくのがおすすめです。


●持続的に活動していくうえで大事なことは何でしょうか?


私たちのような非営利団体の活動には、ボランティア、寄付、協賛企業や団体など、多くの協力者が必要です。なるべく参加ハードルは低くしているとはいえ、手間も時間も、場合によっては費用もかかるわけですから、主催者である私たちは、参加してくれる方の納得や満足というリターンを十分に考えて活動を設計し、満足感を最高にするための「おもてなし」の心が必要です。


しかし、主催者が気負いすぎると継続できないでしょう。発注者・受注者のような上下関係ではなく、フラットなつながりの中で、それぞれ自分ができること、得意としていることをお互いに出し合う気持ち、イーブンな関係において、みんなで達成しその恩恵も全員が受け取るのだという共同体感覚が、自走・持続的な活動には大切だと思います。


お話:一般社団法人オーシャンスイープ協会 細田 正幸さん