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弘前市
「アップサイクル推進に向けた連携・協力に関する協定」を締結


アップサイクルで市のクリーン活動に付加価値を


●取り組み内容を教えてください。


弘前市は、市内で発生するごみを有効活用することを目的に、令和4年、オンワード商事株式会社(本社:東京都。以下オンワード)、豊島株式会社(本社:東京都・愛知県。以下豊島)と協定を締結。「河川清掃活動などによる廃棄ペットボトル回収(弘前市)➡繊維・生地生産(豊島)➡アパレル製品化(オンワード)」というアップサイクルを推進するため、3者が協力・連携していきます。また、リンゴの加工残渣を使ったバイオマス製品の研究開発でも連携していきます。


●取り組みにつながったきっかけを教えてください。


弘前市は全国的に見てごみの量が多いことが課題となっていました。ごみは全市民・全事業者が出すもの。全ての人が関係者で、行政主導だけではなかなか解決しません。そこで弘前市ではごみの減量化・再資源化を目指して、市民、事業者と連携・協力し、締結を進めてきました。これまで約20の企業・団体との協力体制を構築しています。


豊島は、海や川、森などから回収したペットボトルなどの廃棄プラスチックからつくった繊維「UpDRIFT™(アップドリフト)」を開発、Tシャツや腕時計のバンドにアップサイクルしていること、オンワードが豊島のプロジェクトに賛同し「UpDRIFT™」を使った商品づくりに取り組んでいることを知りました。


弘前市でもペットボトルを拾うクリーン活動は各地で行ってきたので、「市民がクリーン活動に参加して拾ったものが、新しい商品になる」というストーリーはインパクトがありますし、クリーン活動に新しい価値が付加されることから、弘前市も協働したいと考えました。


市民の意識が変化。地元企業との連携も視野に


●協定締結後、どのような取り組みを行っていますか?


まずアップサイクルの啓発・周知において連携をスタートしています。

弘前市は広報活動に力を入れ、アップサイクル推進・ペットボトル回収を呼びかけています。

2022年夏に行った大規模なクリーン活動の際に両者の社員も参加し、中学校でアップサイクルについてレクチャーをしてもらいました。少しずつアップサイクルへの意識醸成が進み、市民や団体からペットボトルを持ち込んでいただいたりすることが増えてきました。



●どのようなアップサイクル商品の展開を考えていますか?


今後、回収量が増えてきてから具体化する予定です。豊島によると「UpDRIFT™」のTシャツの場合、プラスチック含有率は約10%、1枚のTシャツに約15本のペットボトルが使用されているそうです。弘前市では、例えば、「UpDRIFT™」で中学生の夏の制服としてポロシャツを製作するというアイデアが出ています。

また、今回の協定は、地元企業の新規事業の掘り起こしも目的としています。例えば、地元企業で集めたペットボトルを使って企業のユニフォームをつくるなど、地元事業者とのビジネスマッチング、新規事業の創出も図ります。


自治体と企業が連携することで取り組みが大きく進み、広がる


●自治体と企業が連携することの相乗効果は何でしょうか?


自治体だけでは技術面・アイデアが不足しており、事業化することは難しい。一方、企業だけでは地域住民・地元の事業者をうまく巻き込むのは難しい。自治体を挟むことで地域とのつながりができて理解・協力を得やすくなったと思います。双方が補い合うことで取り組みが進み、活動が大きく広がったと思います。


●連携するためのポイントは何だと思いますか?


現在、多くの企業がSDGsおよびESGへの取り組みを事業化しており、その事業を広めるために連携できる自治体を探していると思います。弘前市も、企業側からお声がけいただく機会が増えています。その中から、地域課題解決のために協働できる企業をいかに探すかが重要です。

そのためには、自治体の課題をパートナーと十分に共有することが大切でしょう。行政、企業、市民、地域事業者それぞれが課題を共有し、解決のためにできることをする関係を構築できれば、連携はうまくいくのではないかと思います。


まずは走り出しながら、柔軟に連携の形をつくり、広げていく


●このような取り組みを他の自治体が真似したいと考えた時、「こうすればうまくいくよ!」というアドバイスはありますか?


先に述べた通り、ごみの問題に関しては地域にいる全ての人が関係者なので、さまざまな意見・利害がからみ、行政だけでは解決が難しいことは、全国の自治体共通の悩みではないでしょうか。また、自治体は新しいことを始めるにあたり、道筋や完成形が見えないうちは進められないということが多いと思います。発想を変えて、まずは連携し走り出してから形にしていくという柔軟なスタンスも時には必要かなと感じます。


弘前市の場合、協定締結後に市・企業それぞれのネットワークが広がり、「私たちも協力したい」という協力者・賛同者が現れ始めています。そういった方々も巻き込みながら、より弘前市らしいアップサイクルの取り組みに発展することを期待しています。


お話: 弘前市環境課 成田 孝行さん