日本全国のプラモデル製造品出荷額の8割以上を占めている静岡県静岡市。
その静岡市では、地場産業であるプラモデルを活用し、地元の子ども達に海洋プラごみ削減を呼び掛ける環境教育活動を実施しています。
活動を推進している静岡市環境局ごみ減量推進課の伊熊さんと加藤さんに話を聞きました。
-静岡市の取組内容について教えてください。
静岡市が世界に誇る地場産業であるプラモデルを題材として、市内の小学校で地元の海岸に漂着したペットボトルをリサイクルしたプラモデルの組立授業を実施しています。
玩具メーカーであるBANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ)と連携し、子どもたちが集めた海洋プラスチックごみを混合したプラモデルによる環境教育授業を通して、海洋プラスチックごみを生み出さない意識付けを図るとともに、海岸清掃等の実践行動を促しています。
静岡市の取組連携イメージ(資料:静岡市)
-具体的な授業内容は?
事前学習として、河川や海岸の清掃活動を行います。清掃後、どんなものが落ちていたかを振り返りながら、集めた漂着ペットボトルを子どもたちと洗浄し、BANDAI SPIRITSに渡します。
その後、BANDAI SPIRITSが漂着ペットボトルを混合したプラモデルを学校へ提供、子どもたちが授業の中で組み立てます。組み立て後には、川や海に捨てられたプラスチックには汚れが付着し、重金属なども吸着しているため、リサイクルが困難であること、プラスチックごみを出さないことが大切であることを伝えています。
また組立授業の中では、市内の海岸清掃団体にも協力をいただき、子ども達に海岸清掃活動への参加を呼び掛けることで、継続的な活動を促しています。
組立授業の風景(中島小学校)
-この取組のきっかけは?
連携先であるBANDAI SPIRITSから、「海洋プラごみを活用するための取組が一緒にできないか」という相談を受けたことがきっかけです。今年(2024年)の2月から海洋プラごみのリサイクルによるプラモデル製作の試験を開始しました。
当初は漂着ペットボトルを50%くらい混合したプラモデルの製作を検討していましたが、異臭やペットボトルから海洋で吸着した水銀が検出されるなどリサイクルには課題が多いことがわかりました。
結果として、漂着ペットボトルの1%程度しかプラモデルに混合できませんでしたが、このことを逆手に取ることで、「海に出てしまうと再資源化が難しくなる」というメッセージを伝える環境教育を実践しています。
―取り組んでよかったことは?
海岸の清掃活動やプラモデルの製作など、子どもたちがいきいきとして、楽しみながら授業に参加してくれています。また自分で組み立てたプラモデルを自宅に飾っておくことができるため、楽しみながら学んだことが強い記憶となって残り、海洋プラごみを出さないという意識や行動につながると考えています。
今回の取組は、プラモデルという地場産業を活用しているので、地元の産業振興という点でも期待をしています。
多くのプラスチックごみは陸域で発生しており、海に面している地域だけの問題ではないため、多くの人に関心を持っていただく必要があると考えています。山・川・海を有する静岡だからこそ、この取組を通じて多くの方々に海洋プラごみ削減の重要性を理解いただきたいと思っています。
-今後取り組んでみたいことは?
現在実施している教育プログラムについて、全国の学校で展開できるようパッケージ化を検討しています。清掃活動やプラモデルの組み立てを通して環境教育を全国に広めていきたいと考えています。
プラモデルを活用した環境学習を全国に展開していくことで、日本各地に海洋プラごみの削減への取組が広がっていくことを期待しています。