プラスチックを“まわり続ける”資源に。神戸市と企業、市民がタッグを組む全国に先駆けたチャレンジ
「つめかえパック」を資源に変える。プロジェクトの仕組みとは
シャンプーや洗剤などの日用品、つめかえパックを使っていますか? つめかえパックの販売シェアは、日用品製品全体の約80%に達しています。本体ボトルに比べてプラスチック使用量が70~80%少なく、つめかえパックを選択することはプラスチック削減に大きく貢献しています。 ところでつめかえパック自体は使用後どうなっているのかといえば、リサイクルできているとはいえない状況です。例えば、花王株式会社はライオン株式会社と協働し、つめかえパックを回収しブロックに再生する活動に取り組んでいますが、こういった活用例はまだ少なく、ほとんどの自治体では焼却され熱エネルギーとして利用されています。 リサイクルが進まない理由は、その原料にあります。つめかえパックは、ペットボトルのような単一原料ではなく、内容物を温度や湿度、紫外線などから守るための薄いフィルムを重ねた複層構造でできているため、再生しても不均質なプラスチックになってしまいマテリアルリサイクルが難しいのです。 こうした課題を解決しようと2021年10月、つめかえパックをつめかえパックへと水平リサイクルし資源循環を目指す「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう、つめかえパックリサイクル~」がスタート。神戸市をフィールドに水平リサイクル化に向けたプロジェクトを行っています。参画するのは神戸市と、「競合」を越えてプロジェクトに賛同した16企業※、そして150万人の神戸市民です。
(詳細は https://kobeplasticnext.jp/next/tsumekaepackrecycle/)※小売4社/ウエルシア薬局、コープこうべ、光洋、ダイエー メーカー10社/アース製薬、花王、牛乳石鹸共進社、コーセー、小林製薬、サラヤ、P&Gジャパン、ミルボン、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング、ライオン リサイクラー2社/アミタ、大栄環境 「神戸は海とともに発展してきた都市です。便利で“なくては困るプラスチック”と、海を悩ませる“あっては困るプラスチック”、この両方にしっかりと向き合い、プラスチックを持続可能な資源にするため取り組んでいく責務があります」 神戸市環境局でプロジェクトを担当している濱住康弘さんは意気込みを語ります。
プロジェクトにおける神戸市、企業、市民のそれぞれの役割と仕組み
2021年10月にスタートした実証実験では、市民・小売り・リサイクラー・メーカー、そして神戸市がそれぞれ役割を担い持続可能な回収スキームを確立すること、水平リサイクル化の技術開発および検証、他のリサイクル製品化などを目的としています。
《神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~体制図》
市民:使い終えたつめかえパックを洗って乾かしたうえで、市内75ヵ所の小売店舗に設けられたリサイクルボックスへ持ち込む 小売:75店舗で店頭回収。集まったつめかえパックは店舗の配送の戻り便等を活用し集約するなど収集の効率化及び環境負荷を低減 リサイクラー:集まったつめかえパックを収集、異物などを除去し水平リサイクル技術開発用とその他のリサイクル製品用に選別。リサイクル製品の原料を製造。 メーカー:課題や技術を共有し水平リサイクルを目指す。また、リサイクルしやすい容器の検証や市民に還元するさまざまな用途のリサイクル製品も検討
神戸市:取り組みの周知・広報活動。回収に協力してくれた市民に対するインセンティブとして、神戸市公式アプリ「イイことぐるぐる」ポイントを、つめかえパック1枚につき50ポイント(5円相当)付与
「技術開発のためにつめかえパックの“量”が必要で、回収量の目標は初年度5トン/年。2023年に水平リサイクルを実現し、その後、再製品化したものを神戸市内で実証販売することを目指しています。壮大な目標にはなりますが、最終的には、つめかえパックがあたりまえのように集められ、あたりまえのようにリサイクルされる。リサイクルがビジネスとして回り、サーキュラーエコノミーを実現できればと思っています」(濱住さん)
Q.つめかえパックって
リサイクルされているの?
実は複雑な構造でリサイクルが難しいのですが、神戸市ではつめかえパックを集めてつめかえパックへと再生する、世界的に新しいプロジェクトが進行中ですよ!