リサイクルしやすい工夫が満載! 身近なプラスチック、ペットボトルの“プラスマ”な秘密
水やお茶、コーヒー、紅茶、ジュースや炭酸飲料……。私たちの生活に欠かせない清涼飲料水。その生産量・市場規模は大きく、国民1人あたり毎日500mlのペットボトル約1本分を飲んでいる計算になります※1。
清涼飲料水の容器は缶、ビン、紙パックなどがありますが、圧倒的に多いのはペットボトルであり、容器別生産量のシェアの77.2%を占めます。 「ペットボトルは無色透明で中身が見えて、軽くて丈夫。蓋を何度も開閉でき結露が少なく、バッグに入れて持ち歩きができる。さらに清潔で安全。こうした利便性と安全性・安心感から多くの消費者に選ばれています」 そう話すのは、飲料メーカーなど240社の会員企業で組織される一般社団法人全国清涼飲料連合会(以下、全清飲)の那須俊一さんです。今回はペットボトルにまつわるいろいろなお話を聞かせていただきました。
ペットボトルの資源循環のための飲料業界自主設計ガイドライン
「清涼飲料水にペットボトルが採用され始めたのは40年前のこと。私たち飲料業界は当初から、ペットボトルは地球環境に配慮し、資源循環を前提にすべきと考えてきました」 ペットボトルの資源循環の推進のためには、ペットボトルの設計段階からリサイクルを前提とした製品づくりが不可欠と考え、清涼飲料業界とペットボトル事業者団体が協働し、1992年に「指定PETボトル自主設計ガイドライン」を設けて、分別回収・資源循環促進のための取り組みを進めてきました。 ガイドラインの主なものを紹介しましょう。
リサイクルを前提にボトル本体は無色透明で統一
ペットボトル本体はPET(ポリエチレンテレフタレート)でできています。海外にはブルーやグリーンなどの色がついたペットボトルがありますが、日本で生産される商品には無色透明のペットボトルしかありません。これは偶然ではなく、効率的にリサイクルすることを優先し、単一素材・無色透明で統一することを自主設計ガイドラインで運用してきた成果です。 また、「自主設計ガイドライン」では、シュリンクラベルにミシン目を入れることで消費者が回収の際に容易にラベルを剥がして分別できる工夫が推奨され普及しています。
もちろん、リデュースも進んでいます!ペットボトルは25%も軽量化
清涼飲料業界はリデュース(PETの使用量削減)にも長年尽力してきました。2004年との比較でペットボトルは25.3%(2020年度実績)もの軽量化を実現しています。軽量化を通じてPET樹脂の使用量を削減することができ、軽量化がなかった場合と比較すると176.8千トン/年の削減効果※2を実現しています。
※2出典:PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2021」
「こうした軽量化の背景には、ペットボトルの成型技術、中身の充填技術の進歩が必須です」と那須さん。ペットボトルは溶かした樹脂を「プリフォーム」と呼ばれる試験管のような形の金型に流し込み、高圧空気で膨らませて成形します。この工程で、手で持っても形が崩れない硬度、炭酸飲料などを充填しても破裂しない、配送時や落とした時の衝撃にも耐える強度を保ちながらギリギリの薄さにし、さらにボトルデザインの工夫も重ねています。身近なペットボトルには、実はスゴイ技術が詰まっているのですね。
出典元)PETボトルリサイクル推進協議会
世界に誇る日本のペットボトル回収率とリサイクル率
「日本のペットボトルのリサイクル率は2020年度に88.5%、回収率にいたっては96.7%を達成しました。この数値はヨーロッパ、アメリカに比べても非常に高く、トップクラスです」
《米国・欧州・日本のペットボトル回収率とリサイクル率(2020年)》
※PETボトルリサイクル推進協議会/欧州:Wood Mackenzie社/米国:NAPCOR(National Association for PET Container Resources)
高い回収率の理由として、那須さんは、「まず、1995年に制定された容器包装リサイクル法が挙げられます。リサイクルを推進するために消費者、市町村、事業者、三者の役割分担を定めるもので、他国にはないとてもユニークな法律です」と話します。 日本国内でのペットボトルの回収は大きく分けると「市町村系(家庭からの排出)」「事業系(家庭以外のオフィスや商業施設からの排出)」の2つになります。 「市町村系(家庭からの排出)」として出るペットボトルは、すでに多くの市民が市町村ごとのルールに従って「ペットボトルは指定された日に、指定された場所に出す」というアクションが習慣となっており、市町村が分別回収することできれいな状態のペットボトルを効率よくリサイクルに回せます。
《容器包装リサイクル法の仕組み》
※環境省「容器包装リサイクル法とは」
一方「事業系(家庭以外のオフィスや商業施設からの排出)」では、自動販売機の横に設置しているリサイクルボックス(飲料空容器回収ボックス)からの回収も含まれ、飲料メーカーが回収に積極的に関わっています。これは自動販売機をオペレーションする企業がコストを負担し、自主的に設置・回収しているものです。
ほとんどのペットボトルは回収できている
指定ペットボトルのリサイクル用資源としての回収率は96.7%です。では、残りの3.3%が散乱や海洋に流出しているかというと、そうではありません。PETボトルリサイクル推進協議会の調査によると、残り3.3%のほとんどは、一般ごみ(燃えるごみ、あるいは燃えないごみ)として捨てられている、という結果が出ています。 「山や海に出てしまうペットボトルは、残りのごくわずかな割合です。ですが、もともとの販売量が多いため、わずかなパーセンテージだとしても業界として放置はできません。飲料業界の責任として100%回収を目指して啓発活動を続けています」
ペットボトルのリサイクル、気になることを聞いてみました
最後に那須さんに、飲み終わったペットボトルをリサイクルするために、私たちができることを聞いてみました。
Qペットボトルをリサイクルするためにどうすればいいですか?
「キャップを外し、できればラベルも外して、ボトル本体だけを軽くすすいでからリサイクルに出していただけるとありがたいです」
Qキャップとラベルはどうしたらいいですか?
「キャップとラベルはプラスチックです。地域のプラスチック容器回収ルールに従って出してくださいね」
Qペットボトルを水筒として使ってもいいですか?
「ペットボトルは皆さんが繰り返し使うことを想定して設計していません。お湯を入れると熱によって変形したりしますので、空になったペットボトルを水筒代わりに二次利用するのは、衛生面・安全面の観点からおすすめしません。リサイクルボックスに入れていただくことが本当のエコになります。ぜひご協力ください」
Q.ペットボトルは何にリサイクルされているの?
卵パックや青果物トレイ、衣類などに生まれ変わるほか、再びペットボトルに戻す「ボトルtoボトル」も進んでいます。飲料業界では全国各地でペットボトルの資源循環に取り組んでいます。