廃棄されるはずだった漁網から鞄ができた。企業が連携した“アップサイクル”で海洋ごみを減らす
北海道の漁港からスタートした企業間リレーでつくるアップサイクル
アップサイクルという言葉をご存知ですか? 使用したものを資源として再利用するのがリサイクルですが、アップサイクルは元のものよりも価値の高いものに生まれ変わらせる新しいリサイクルの形です。 アップサイクルはすでに世界で始まっている取り組みです。しかし回収・再資源化や製造工程において手間とコストがかかるため、アップサイクルプロダクトは高額になりがちです。そのため一部の高級ブランドなどが先行して商品化しているものの、日本の多くの消費者の手に届くまでには至っていませんでした。 海洋プラスチックごみを再資源化し、多くの消費者に選ばれる付加価値のある商品を作り、海洋ごみ削減とビジネスを両立させる。この難しい課題に挑戦したアップサイクルが2021年10月、日本で産声を上げました。廃棄される予定だった漁網(廃漁網)を再資源化して作り上げた鞄です。
このアップサイクルプロジェクトをけん引したのが公益財団法人日本財団の支援を受け活動する一般社団法人アライアンス・フォー・ザ・ブルー。「アライアンス(Alliance)」は「同盟・連携」の意味で、その名の通り、美しい青い海を次世代へとつなぐために、複数の企業や団体を結び付け協働しながら、海洋ごみ削減につながる新しい商品やサービス・仕組みの企画・開発などを行っています。代表理事の野村浩一さんに詳しい話を聞きました。
北海道東で使われた漁網が兵庫県豊岡で鞄に再生されるまで
漁網を鞄にアップサイクルするとは、どういうことなのでしょうか。 「漁師さんが使い終えた漁網を回収、再資源化して、それを原料に糸を作り、布を織り、その布を縫製して作る鞄です。廃棄予定だった漁網を、付加価値の高い鞄に生まれ変わらせるアップサイクルです」 そう言って野村さんが見せてくれた鞄は、「どこに廃漁網が使われているの⁉」とびっくりするほどおしゃれでカッコイイ。製造しているのは、兵庫県豊岡市の鞄工業組合に属する数社のメーカーです。
「豊岡市はコウノトリの野生復帰に取り組むなど、もともと環境保護に熱心な街。SDGs実現に向けた取り組みにも積極的で、「豊岡鞄」の名前で作られる鞄も永久保証付きで、修理しながら長く使い続けられるものづくりをしています。私たちが「漁網由来の布で鞄を作りませんか」と声をかけたら快く協働してくれました」 では、廃漁網から鞄ができるまでの過程はどうなっているのでしょうか。 「まず漁網は北海道南東部で、サケ・マス漁で使用されたものを使っています。漁網は1~2年で取り換えるため廃棄量は膨大になります。それを各漁協、漁師さんに分別してもらい、厚岸町の地元企業の山本漁網さんが回収します」 回収した廃漁網はまず、配送コスト削減のために圧縮し減容します。次に、愛知県一宮市にあるリサイクル会社・リファインバース株式会社へ運ばれ、洗浄し微細なごみを取り除いた後に、バージンナイロンと同等の品質を持つ再生ナイロン樹脂のペレットにします。それをもとに、モリト株式会社の関連工場で織布を行い布やテープなどのパーツが作られます。こうして出来上がった布やパーツを使い、豊岡市で鞄を製造するのです。
《廃漁網から鞄が作られるまでの流れ》
日本列島を南下しながらアップサイクルされた廃漁網由来の豊岡鞄は、海を思わせるオーシャンブルーとディープブルーの2色展開。トートバッグやショルダーバッグなどさまざまなラインナップがあり、使用される生地の廃漁網配合率は25%といいます。 2021年10月に豊岡鞄のオンラインストアや全国の百貨店などで発売開始以来、環境問題に関心をもつ企業や団体、マスコミの注目度も高く、予想以上の反響とか。
「女性誌『25ans』の協力で、モデルで環境問題のアクティビストでもあるTAOさんとのデザインコラボバッグの商品化も実現しました。それに合わせて厚岸から豊岡までTAOさんが旅をする特集記事が雑誌に掲載され、動画も公開されました。若い女性たちにもアップサイクルへの関心が広がってほしいですね」
https://www.25ans.jp/fashion/fashion-other/a37926130/taobag-211127/Q.環境も大切だけど、
ファッションだって楽しみたい!
海の環境に配慮した新しいブランドが日本でデビュー。ブランドの立ち上げ、商品化にかかわったアライアンス・フォー・ザ・ブルーの方に更に詳しいお話を聞いてみました!